2009年03月09日(月)

TFXが開示した株価指数CFDは魅力的な市場となるのか〜マーケットメイカーの視点〜

 完全なオークション方式ではじめられるTFXの株価指数CFDであるが、単に個人投資家からのみの板寄せではなく、幅広くマーケットメイカーを国内外から募るという方針である。

ここで、現在開示されているスペックについて以下の点を確認する。

  1. 原資産市場は日経平均そのものとうたわれているが、これはあくまでも個人投資家にわかりやすくするための言葉であり、そこでヘッジをするとかの意味ではないとのことである。オークション方式なのでTFXがヘッジをするわけではないし、MM(マーケットメイカー)がどうヘッジするかはTFXにとっては関係がないので、マーケットを主導するMMのロジックに影響され、結局は先物に連動することになるだろう。裁定の理論上そうでなくてはおかしい。
  2. 呼び値は5円単位。
  3. 倍率は100倍。大証の日経ミニと想定約定代金が一致する。
  4. 金利は政策金利(0.1%)。これに鞘を乗せるという話はいまのところ聞いていないし、取引所としてそれはないだろうと思われる。FXの場合と同じである。
  5. FXと違ってMMにしか当てないのではなくすべてオークション方式なので個人、法人、MMの区別なく値段がぶつかれば約定となる。

まずこの情報を頭にいれて次の話に進む。

MMは基本的に、ヘッジ市場をそのプライシングモデルに入れている。この場合、日経225採用銘柄の個別株全部もしくは日経225先物(大証、SGX、CME)となる。ヘッジ市場を一切持たない前提では参入はしない。特に市場に流動性をもたらすのはスペキュレーターであり、彼らはかならずヘッジ市場とのスプレッドポジションからアビトラできる流動性を提供する。ポジションテイカーでなければノーヘッジでは手は出さない。一方ポジションテイカーはそれなりの量を求める。一回の取引で1枚2枚程度の細かい約定では何の魅力もない。

MMとなる相手としてFXのようにドイツ銀行とかゴールドマンとかをイメージする人もいるかもしれないが今回彼らは対象外である。彼らは取引所取引としての取次はするが、CFDの価格を直接APIで提供することはない。あれば大方針転換である。

可能性がある相手としてはファシリテイター(リテールアグリゲーターとも呼ばれる)であるCMC、SAXO、GFT、IGMarket、FXCMであるが、いくつかの理由により可能性は低い。第一に、オークション方式であることで二の足を踏む。MM同士であたるのを好まない。第二に、取引所のMMになるために支払う様々なコストが見合わないと考える。第三に、取引所取引に入ると取引相手が見えなくなることの危険性を重視する。

OTCはある程度相手がだれかがわかることで自分が受けるリスクについての予見が可能となるし、最悪の場合取引を拒否することができるが、取引所取引では相手がだれかわからず、突然取引量が増大するなどリスクコントロールが不安になる。

CTAやヘッジファンドはどうかというと、この辺はポジションテイカーとしてはあり得るが、彼らはすでに取引所取引で十分機能を果たしているので、それと同等の流動性プラス、コストメリットが確認されない限り入っては来ない。

MMにとって取引に必要な資金調達にはコストがかかる。ただではない。コストの基準は一般に3ヶ月LIBORを指標としている。その調達コストは間違っても政策金利ではできないとなれば、ショートにせよロングにせよ、日々TFXからもらう(へ支払う)政策金利分の日歩では赤字になるので、その分をカバーするだけの広げたプライスにならざるを得ない。呼び値が5円なのでそれ以下では刻めないため、この要因だけでも買値マイナス5円、売値プラス5円、もしくは売値は日歩ゼロならコスト分の上乗せなしとなる。ちなみに、OTCとは違い、TFXはロングの客から取る日歩はもらえないので、売り手に全部渡すことになる。つまり、買い手が50円の日歩を払うなら、売り手は50円もらえることになる。配当についいても同様になるはずである。

このマーケットに参加するために必要な資金はTFXに預ける証拠金だけでなければ魅力的ではない。発生コストは取引一件ごとの手数料となるが、通常MMは流動性を維持するという対価としてこの辺は免除してほしいとか、極限まで単価を下げてほしいというはずである。ASXもここでMMにコストを強いたことが失敗の原因の一つとなっている。
ASXでも開始時点で5,6社のMMの参加を見たが、ヘッジ市場としての先物市場との相関性に合理性とか整合性(Rationality)がないためにどうしてもスプレッドがワイドにならざるを得ず結果失敗に終わっている、といつものCFDの生き字引である私の同僚は言う。

これらが指し示すものは、単にMMをたくさん参加させれば流動性が維持できるということではないということである。問題はMM、それがヘッジャーであれ、スペキュレーターであれ、彼らの自動的・機械的に価格を生成するプライシングモデルに内在するヘッジ市場の制約を受け止められる仕様でなくてはらないことと、それらの市場との相関性が維持される仕様でないと参加しても魅力的なマーケット(売値と買値)のサポートはできないということである。金利の話もしかりである。単に個人投資家には安いほうがいいからということで政策金利を使うというのもうなずけるが、それではMMは入りづらい。プロは、彼らが使うお金には必ず調達コストがかかっているため個人投資家とは条件が違う。一方、一部のOTCのCFDで政策金利をベースにしている業者もいるが、彼らはそれに金利のマークアップを2%ぐらい取るので、そこでずれが緩和される。3ヶ月のTIBORを見ても1%を超えることは現在ないので、2%の鞘を取ることでその中で吸収できるのである。

上記のようなMMのプレゼンスが高まると結局かれらのプライシングモデルは日経225先物をヘッジ対象としているので、たとえ名前が「日経平均株価(CFD)」(そのもの)とはいえ、動きは完全に日経225先物に連動してゆかざるを得なくなると推測する。日経平均株価と乖離するかどうかは、論理ではなく、その市場で取引する人たちの期待値(Expectation)と裏側で行われるヘッジ取引の対象市場の動きが影響するものである。そうなると単なるOTCの日経CFDと同じ動きになるが、プライスはOTCよりもワイドになる。

画像(160x159)

いまのところ、わたしに見える限りでは、TFXのCFDを取引する個人投資家にとっての魅力は税制優遇でしかない。これは法人には関係のない部分である。しかしFXにおける成功もこの税制優遇が大きく寄与しているという印象が大きいので、馬鹿にはできない。しかし、FXは他に代替市場がないが、これは実際に大証の日経225先物がその機能を果たしているのでFXとはケースが違う。また、FXはMM方式で始まったが、今回は完全オークション方式である点も大きく違う。さて、二匹目の鰌(どじょう)はいるのか、いないのか。

Posted by 尾関高

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プロフィール

GCI Technology USA勤務

尾関高

1986年名古屋大学経済学部卒業。1988年サンダーバード経営大学院(アリゾナ州、米国)卒業。主に日短エクスコ(現在のセントラル短資)にて約9年間、インターバンクの通貨オプションブローカーを経験し、1998年から現在のひまわり証券(旧ダイワフューチャーズ)にて日本で最初に外国為替証拠金取引のシステム開発から立ち上げ、さらに、2006年5月に、これも日本で最初にCFDを開始、現在にいたる。
現在は、営業面のみならず、本商品にかかわるさまざまな分野においても積極的に意見具申中。
拙著に、「マージンFX」(同友館、2001年2月)と「入門外国為替証拠金取引〜取引の仕組みからトラブル防止まで〜」(同友館、2004年6月)がある。

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