2010年06月02日(水)

くりっく株365とそのコンペ

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先日、東京金融取引所(以下、TFX)から、新株価指数先物(CFD)である“くりっく株365”を上場することが発表されたが、その内容も(かなり“ようやく”といったレベルだが)パブリックコメントとして公開されたので、私見を述べたいと思う。
▼[意見公募]取引所株価指数証拠金取引の上場について

■新株価指数先物(CFD)改め“くりっく株365”

 以前にも発表があった新株価指数先物(CFD)では、取引所システムはユーロ円金利先物と同じLIFFE CONNECTを使用。原資産は日経225で取引時間は9:00〜15:00だったが、(様々な視点での再考の結果、)そもそもの取引所システムはFXと同じくりっく365を使用。原資産は日経225だけではなく、アジアや欧州の海外指数も合わせて上場し、取引時間は実質24時間と大きく内容を変更することになったようである。取引所システムがくりっく365である以上は売買方式もオークション方式ではなく、マーケットメイカー方式となる。分かりやすく表にするとこんな感じになると思う。

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表にしてみると以前との違いがはっきり分かってくる。逆に言えば、以前では大証の日経225先物と遜色なかったのが、取引時間や売買方式、呼値といったところで(良く言えば)差別化ができていると思う。

■コンペは大証と店頭CFD、そして海外先物

 さて、大証の名前を出したので、そのコンペについて書きたいと思う。株価指数を原資産とした商品はいわゆる大証の日経225先物だったり、店頭CFDの日本株価指数225種(JAPAN225とも言われているが)だったり、東証や大証に上場しているETFだったりするが、これにSGXやCMEを始めとした海外先物も含まれてくる。そこでくりっく株365の有意性が問われるワケだが、まず店頭CFDの規制が入ってくる。店頭CFDはFXと同様、2011年から厳しい規制が実施され、株価指数CFDのレバレッジに関しては最大10倍となる。この規制自体は店頭CFDが対象であって、くりっく株365は対象外なので、ぶっちゃけこれがあるからTFXがくりっく株365を開始すると言っても過言ではないと思う。そして、さらに店頭CFDと比べて税制が優遇されるので、世間的には“レバレッジ優遇・税制優遇”を謳うこともできるのである。取引所であるTFXがレバレッジ優遇を声を大にして謳うのかは微妙な問題だが、FXのレバレッジ規制が行われるなか、取引所FX、取引所CFDに転化させたいTFXとしては最大の追い風であり、根拠でもあるのだろう。

■くりっく株365の弱点

 いきなり核心をつこうと思う。別にイジワルのつもりではないのだが、こういうことはきちんとする性質(タチ)なので、その点ご容赦願いたい。ここまで書いた時点ではくりっく株365のほうが店頭CFDよりも有利で、場合によっては大証の日経225先物や海外先物よりも優れていると思われるのかもしれないが、ビジネス的には一概にそうでもなかったりする。

▼店頭CFDの出来高No.1はNYダウ。次いで日経225
既に店頭CFDを取扱っている証券会社もしくはそのシステムを提供しているベンダーに聞いてみると、店頭CFDの出来高No.1はNYダウで全体の40%以上を占めており、次いで日経225が25%程度で、残りはS&PやDAX、FTSE等で構成されているようだ。さらに株価指数CFDの出来高としてはそんなに多くはないとも言われている。同じ株価指数では大証の日経225先物だったり、CMEの日経225先物があるからなのか、はたまた株価指数よりも個別株のCFDのほうが、ニーズがあるのか、その点はさらに深堀したマーケティングが必要になるが、NYダウがないくりっく株365は(私から見て)ビジネス的にかなり弱いと思う。NYダウだけに焦点を当てると海外先物が(顧客ニーズという意味では)有利だと思うし、それに向けて準備している証券会社も2、3社あると聞いている。

▼コストが割高。システムコストを含めると1枚あたり120円くらいになる
あくまでも噂なので真偽は定かではないが、くりっく株365の取引所コストは大証の日経225先物と比べて割高である。それとなくコストを試算してみると(安く見積もっても)1枚あたり120円くらいになるので、そこから証券会社のコストをオンすると顧客に提示できる手数料は(安くても)1枚あたり250〜300円くらいになる。はっきり言ってこれでは誰もやらない。せめて1枚あたり100円で提示できないとビジネスにはならないと思う。また、大証との差と言えば取引時間だけとなるが、これもOMX後にはほぼ同程度になる見込みなので、コストだけが差となるのは分かりきっていることである。やたらと強調するであろう取引期限については(日計り取引が多い)個人投資家にとってはさほどの問題ではないと思う。

▼くりっく株365ではNYダウの取扱いは不可能
話をNYダウに戻す。取引所として株価指数を原資産とした商品を上場する場合は、その原資産となる株価指数のライセンサーと交渉し、使用許諾を得る必要がある。“そんなのに著作があるのか?”といつも訊かれるのだが、株価指数にはそういった権利が存在する。例えば、日経225も日本経済新聞社が算出し、公表している指数なので著作は同社にある。NYダウについてはダウ・ジョーンズ社にある。彼らライセンサーと交渉し、使用許諾を得ることができなければ、それを原資産とした商品を上場することはできないのである。そこでアジアや欧州の株価指数はあっても、アメリカがないのは何故か?となるワケだが、理由はいたって簡単である。それはアメリカがかつてのロビー活動でCFDを全面禁止したからで、いくら(アメリカから見て)国外であっても、国内で許可していない商品の上場を許可することは基本的にあり得ないのである。

結局のところ、くりっく株365については、上述を前提条件とし、その内容がある程度、正しいのであれば、ビジネスとして前のめりになるのは難しいと思う。それだったら大証の日経225先物に注力するだろうし、店頭CFDのレバレッジ対策とするなら、海外先物を取扱ったほうがまだお金になるだろう。そう考えた場合、くりっく株365の取扱会社は大証の日経225先物や海外先物を扱っていない会社が中心になるのは想像に難くなく、また前途が多難であることも容易におぼついてしまう。くりっく365の場合だったら、単純に店頭FXだけがターゲットであったが、今回は国内及び海外の先物、そして店頭CFDがターゲットになる。いくら規制の追い風があったとしても、この恩恵は店頭CFDに限られることであり、国内・海外の先物には遠く及ばないのが現実であろう。

ともあれ、繰り返しになるが上述の前提条件がある程度、正しい場合は(くりっく株365は)かなり微妙だと言うことであるので、例えばコストが大証のそれと遜色ない水準であったり、ダウ・ジョーンズ社が使用許諾を出せばその限りではないことを念のために書いておく。

Posted by 葛木茂樹

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プロフィール

エヴァンジェリスト&コメンテーター

葛木茂樹

かつては証券会社や情報ベンダーに勤務していたことがあった。それらで培ったノウハウを活かし、フリーのコメンテーターとして日々を過ごしてきたが、現在では某社のエヴァンジェリスト(伝道師)として職務に励んでいるようだ。前職のこともあり、当然ながら金融業界には強い。

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